部下を適切に評価することは、上司として重要なスキルです。
また、部下のモチベーションやパフォーマンスに大きな影響を与えます。
だからこそ、部下を評価する時は公正でバランスの取れた評価を行うことが求められるでしょう。
そこで今回は、部下を評価する時に気を付けるべき事を解説します。
- 部下を正しく評価する方法
- 上司が部下の評価で間違ってしまう心理
- 部下に評価を伝える時のコツ
まずは評価するのに必要な基準や評価のポイントを。
そしてより評価に不公平をなくすために、陥りやすい心理を学びましょう。
最後に伝え方です。
いくら良い評価のやり方ができても、部下に伝える方法がダメだとモチベーションに繋がりません。
部下を正しく評価する方法
部下を正しく評価することは上司として重要な仕事の1つです。
ここで下手をすると自分のチームから離職者を多数出してしまう事になってしまいます。
項目は多いですが7つの事に気を付けて、部下を正しく評価できるようになりましょう。
部下の評価は公平性と透明性が重要
まずは評価する以前に、どういう基準で評価するのか決めておかないといけません。
上司の気分や好き嫌いで決めてはいけません。
どういった行動や成果が認められるのか、会社で決めておいて誰でも評価基準を把握できるようにしましょう。
そして、評価する時は客観的なデータや事実に基づくこと。
具体的な数値や実績を使うことで、評価の公平性が高まります。
事務方は数値化できる実績がないので難しいです。ですので、できる業務の種類。業務スピードやミスの少なさといった数値化しやすいものを基準としましょう。
部下の能力と成果をどう見る
部下を評価する時は主に3つの要素を見ます。
能力評価 | 実行力や知識力、問題解決能力のこと |
成果評価 | 数字にできる成果や納期を守ること |
情意評価 | 責任力や協調性などの勤務態度 |
このうち、成果評価だけ客観性や公平性があります。
もっとも曖昧なのが情意評価でしょう。
どの評価を重要視するかどうかは上司の裁量ではなく、会社の風土に合わせてください。
ですが基本的には成果>能力>情意の順に比率を設定したほうが、公平性や透明性が確保できます。
今まで部下の評価のやり方を「なんとなく」で済ませてるなら、以上の3つの評価を改めてチェックしなおしてみてください。
部下とのコミュニケーションを行う
普段から部下とコミュニケーションを取ったり、定期的に対面の面談をしてください。
評価そのものにプラスされる事ではありませんが、正しい評価をするためにも部下との関係性を良くしておいた方がスムーズです。
- 評価に一言添えた内容が部下に響きやすい
- 部下を正しく評価しても、関係性が悪いと不満が出てしまう
- 部下の意見や感情を理解することができる
あくまでも例ですが、成果が出ても勤務態度が微妙な人と、成果がイマイチでも勤務態度が良い人。
こんな真逆な部下が混ざってる事はあります。
そんな時に2人の評価の差をどう付けるか、普通は迷ってしまうでしょう。
部下との関係性が薄いと、部下が不満に思わないか・・・などなど不安を感じてしまいます。
普段からちゃんとコミュニケーションを取り、関係性を作っていれば自信をもって評価できますし、評価コメントもより良い内容となるでしょう。
部下に成長の機会を与える
部下を評価するだけでなく、次の目標を設定する手助けをするのが人事評価です。
よくできました→これからも頑張ってください
これでは、部下が成長しません。
上司の役割は部下を管理するだけじゃなく、部下を育てるのも仕事。
ブラックな言い方をすると・・・評価ってのは褒めて良い気分にさせて、もっと仕事をさせるためのエサなのです。
ですが部下の成長は会社の為にもなりますし、部下の為にもなります。
悪い事ではないので、評価プラス「次はこれに挑戦してみよう」と成長の機会を与えてあげましょう。
部下の目標設定と、それに対する評価
部下の目標は何なのか、次の目標はあるのか。なければ上司として目標設定をしてあげる。
目標に対してどれだけ達成できているのか・・・
達成した割合や、達成までの経緯はどうだったのか。
などなど、部下を評価するタイミングで伝えるのが良いでしょう。
的確に部下へコメントをするには、部下のことをよーく見てないと言えません。
そんな時間ねぇ!という方は、まずは自分の仕事を減らす努力をしてください。
評価には長期的な視野も含める
部下を評価するとき、つい直近のミスが頭によぎる事があります。
ですが、そんな短期的な事はあまり評価に入れてはいけません。
もっと長期的に見て、部下の成長の可能性や改善の余地を考慮に入れましょう。
評価基準には組織の文化を取り込む
部下の評価は会社の風土や価値観に合わせてください。
そうでないと上司の物差しで決まってしまって、公平性に欠けます。
また、会社の方針とは違う部下を量産してしまうので、折り合いが合わなくなる事も。
上司としての考えや意見はあるかと思いますが、会社に所属している以上は会社の文化や価値観に合わせて部下を評価してください。
上司が部下の評価で間違ってしまう心理
次は部下を評価する時、つい陥ってしまう心理状態について知りましょう。
ココを理解しておけば、より部下の評価は客観的なものになります。
心理効果は無意識のうちにかかってしまう催眠術のようなものです。
気を付けないと、部下を評価する時にひいきしてしまいますよ。
ハロー効果
部下の評価で陥るハロー効果は、分かりやすい成果や目立った実績に釣られて評価してしまうことです。
人間の認知においては「先入観」が当てはまります。
大した実績でもないのに、良い印象だから・・・。こういうのもハロー効果です。
部下のスキルや能力をより客観的に評価するよう、評価シートに沿って点数をすけることで、ある程度は対策できます。
対比誤差
部下を評価する時に、上司自身のスキルや経験、過去を基準に評価してしまうことです。
もう1つが、他の部下を高く評価した後だと、相対的に低く感じてしまう心理効果のこと。
自分と比較せず、部下を同時に比較したり、他の部下と比較しないよう気を付けることで、正しい評価に近付ける事ができます。
中心化効果
部下の評価が極端にならないように、つい中央値に集中してしまう心理効果です。
部下に嫌われたくないといった心理も影響します。
これも、評価基準を明確に定めておくことで対策できるでしょう。
期末効果
期末に近い成果や実績に引っ張られ、正しい評価ができなくなる心理効果です。
直近の出来事は印象に残りやすいので、評価期間の全体を見て部下を評価するよう気を付けましょう。
寛大化・厳格化効果
- 寛大化→評価が全体的に甘くなる
- 厳格化→評価が全体的に厳しくなる
これは上司が感じている部下の印象や、上司自身の性格で起こってしまいます。
自分にも他者にも厳しい人は厳格化しやすく、甘々な人は寛大化しやすいです。
やはり評価基準をしっかり定めて、基準に沿って公平に評価する事が重要だと言えます。
逆算化傾向
部下の評価をする前に社内表彰されてたり、昇給や他者評価から逆算して、部下の評価を決定してしまう心理効果です。
これはこれ。それはそれ。と切り分けて評価する事がコツ。
上司よりも上の役職の人が、ポロっと1人の部下を評価した時も注意しないといけません。
そんなものは部下の一部だけを見て出た言葉です。
別の要素に影響されてはいけません。
論理的誤差
部下の一部だけを見て優秀だ、と感じた時に「他の部分も優れているだろう」と思い込んでしまう心理効果です。
極端な事を言えば、社内でのコミュニケーションが良くできているから、営業も得意だろうと勝手に思い込むようなもの。
このような勝手な思い込みは、全く論理的ではありません。
部下の能力は、それぞれ切り分けて見るようにしましょう。
イメージ考課
イメージ考課は実際の成果や実績に基づかない評価で、部下に対する印象に引っ張られて評価してしまうことです。
元職や出身大学だけで評価してしまうのがコレ。
このような評価は何も根拠がありません。
評価基準をしっかり作ることで、避けることができます。
部下に評価を伝える時のコツ
部下に評価を伝える時は注意しないといけないことが、いくつかあります。
伝え方によっては部下のモチベーションを破壊してしまうでしょう。
また、部下との信頼関係にも影響します。
部下に評価を伝える時のポイント
部下に評価を伝える時は、公平かつ客観的に・・・は当然の話。
他には
- 適切な場所と状況で
- 肯定的な言葉を強調に
- 改善するべき点も含める
部下に評価を伝える時は個別で伝えましょう。
そしてモチベーションを砕かないように、肯定的な事は強調して伝えましょう。
ですが、改善するべき事もちゃんと伝えないと部下は成長しません。
そのへんのバランスや言い方。順番も伝え方のテクニックとして覚えましょう。
評価コメントの伝え方
一般的には「下げてから上げる」と言われてます。ですが、これはまだ甘い。
文章の中で印象的なのは最後と最初です。
ですので、最初を上げて、その後に下げて、それから上げる。このジェットコースターを意識しましょう。
営業トークでも同じような事をします。
デメリットはメリットよりも先に伝えますが、デメリットを伝える前にお客さんの悩みや不安を商品で解決できる!といった未来の良い結果を話す手法です。
ですので「褒めて、落として、褒める」このような順番でコメントをしましょう。
これは口頭でも文字でも効果的です。
部下のことをよく見てないと分からないコメントも
部下の評価といえば成果や実績に基づいたものだけ・・・では足りません。
普段から部下のことを見てないと分からない。そんな評価もあれば、ベストです。
評価としてポイントになってなくても
- 普段から気を付けている事
- 成果に向けて努力している事
- 他の人のサポートをしている事
こういった要素を褒めることで、部下との信頼関係は良くなります。
部下を評価するだけなら、正直言って「人」は必要ありません。AIに任せれば良いのです。
ですが、なぜ管理職に「人」が必要なのか・・・というと、部下のモチベーションを上げる為に必要だから。
だいたいの上司が「部下と上手くいかない」と悩むのは、普段から見てないくせに表面だけの評価をするから上手くいかんのです。
ちゃんと部下の事を見て、部下と向き合い、部下の事を正しく評価すれば、そんな悩みなんか無くなります。
まとめ:部下を正しく評価するには
部下を正しく評価するために、まず評価基準をハッキリさせましょう。
基準ができてなかったら、公平性も客観性もありません。
部下の不信感が増大するだけで、信頼関係が崩壊して、優秀な部下はすぐ消えます。
ですので基準が明確にない会社は、まず基準から。
基準があるなら、それに沿って客観的に部下を評価すること。
そして、陥りやすい心理効果を学んで、公平にジャッジできるようになりましょう。